知識NO■ |
解説 |
■5) |
自筆証書遺言や秘密証書遺言の検認制度ってなに? |
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検認とは |
相続人に対して、まずは遺言があることとその内容を知らせることにあります。また、検認日に遺言書の形状や、加除訂正の状態、日付、署名など遺言書の内容を明確にしておくための手続きです。
逆に、この手続きは、遺言書の有効無効を判断する手続きではありません。
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検認手続は |
@ |
申立人である遺言書の保管者、遺言書を発見した相続人が |
A |
申立ての最後の住所地の家庭裁判所に |
B |
申立てに必要な書類を揃えて申し立てる |
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準備書類は |
という形で行われます。
検認手続のために準備する書類は?
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申立書一通 |
□ |
申立人の戸籍謄本一通 |
□ |
相続人全員の戸籍謄本各一通 |
□ |
遺言者の除籍(戸籍)謄本一通 |
□ |
遺言者の改製原戸籍謄本(出生から死亡までのすべての戸籍謄本)各一通 |
□ |
【兄弟姉妹が相続人のとき】
遺言者の父母の出生から死亡までの除籍(戸籍)謄本 |
の書類が必要です。
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検認期日前 |
呼び出状を相続人全員に送達した上で、検認当日に相続人全員を呼び出す。 |
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検認当日 |
検認期日である審判手続き当日は、
□ |
審判廷において、出頭した相続人又はその代理人か否かを確認 |
□ |
検認手続きの性質について説明 |
□ |
遺言書を所持するものが遺言書を提出 |
□ |
開封されていない遺言書は、裁判官又は書記官が開封 |
□ |
裁判官が遺言書の内容等を確認したうえで、遺言書のコピーをとる |
□ |
出頭した相続人全員に、遺言書の原本を順次閲覧させ、遺言書を保管するにいたった事情、筆跡、印鑑等の意見聴取をする。 |
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検認結果 |
その結果を検認調書にする。
検認済証明書申請があれば、検認済証明書を作成、遺言書原本の末尾に添付し、契印をおして交付
検認をしたときは、これに立ち会わなかった申立人、相続人や利害関係を有するものに対して、家庭裁判所より通知する。 |
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■6) |
遺贈って何?相続との違いは?どう遺言書に書くの? |
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遺贈とは |
遺言によって自分の財産を他人に与えることをいいます。
ここでいう「他人」とは、法定相続人以外の者をいいます。
つまり、法定相続人に特定の財産を与える場合は遺贈とは言いません。
これに対して、息子の子供(孫)は、息子が生存している場合や、父と孫との間に養子縁組をして息子とならない限り、父の法定相続人ではありません。
したがって、息子の子(孫)へ財産を遺言により与える場合には、遺贈となります。
そこで、「孫○○に○○を遺贈する」と書くことになります。これに対して、法定相続人に相続させる場合には「相続させる」と使います。
なお、
この「相続させる」との記載は、最高裁判例上、一般的には、遺言を遺す者が、相続人間で遺産を分ける方法を指定する意味であるとされます。そして、この場合には、相続人の間で遺産を分ける協議(遺産分割協議)をすることなく、直ちに、遺言により相続させるとされた相続人の所有物となるとされます。
このように「相続させる」との記載することは、相続人の間で遺産の分割をめぐって骨肉の相続争いを防止することに役立ちます。
以下、遺贈と相続の相違点、書き方を表していますので参照してください。
特に、遺贈の場合には、遺贈を受ける側が承認を受けたり許可を受けたりすることが必要になるものがあります。その点を考慮した遺言書の作成に勤めましょう。 |
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遺贈の場合 |
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相続の場合 |
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対象(誰にたいして) |
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法定相続人以外の者 |
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法定相続人 |
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記載方法 |
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「〜を遺贈する。」 |
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「〜を相続させる。」 |
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相続した不動産の登記方法 |
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遺言執行者がいなければ他の相続人全員で共同して登記することが必要 |
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・当該不動産を相続した者が単独で登記する。他の相続人全員と共同する必要なし |
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農地の承継 |
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農地の所有権移転に対して農地法に基づいた知事の許可は必要 |
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農地法に基づく知事の許可は不要 |
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賃借権を承継する場合に所有者の承諾が必要か |
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所有者の承諾は必要 |
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所有者の承諾は不要 |
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遺贈を受ける者、相続人の放棄の方法 |
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遺贈を放棄するのみ |
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遺言者が相続させるとした部分だけの放棄ではなく、相続そのものを放棄する必要がある |
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■7) |
遺言時に考慮する遺留分って何?誰に遺留分があるの? |
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遺留分って? |
「先生…俺の財産だから、遺言で誰にどれだけやろうが勝手だろ!」ということをよく言われます。
確かに、第三者に遺贈したり、相続分を指定して特定の相続人に全財産を相続させることができるのが筋だというご主張もごもっともです。
しかし、
法律上相続制度は、遺された遺族の生活を保障するためや、相続人となろうとする者の相続により自分が取得するであろう相続財産への期待を保護することも予定しています。
そのため、遺言者が、全財産を第三者に遺贈したり、特定の相続人に全財産を相続させると、遺族の生活が保障されなかったり、相続への期待が裏切られてしまいます。
そこで、法律は、遺言者の財産処分の自由と調和させるために、相続財産を一定の割合で一定の範囲の相続人にのこす遺留分制度をおいています。
遺言を書く場合、この遺留分を考慮することなく、書くことは可能です。例えば、息子がいても「妻に全財産を相続させる」という遺言書もなんら問題ありません。息子が遺留分を主張しなければ、そのまま、妻に全財産が相続されることになります。
しかし、一旦相続人である息子が上の遺留分を主張して争った場合には、遺留分の限度で、財産の一部は息子が相続することになります。 |
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遺留分権利者って? |
【遺留分権利者の範囲】
○配偶者
○子 ←胎児、養子、認知された子
○直系尊属(父母、祖父母等)
○直系卑属(孫、ひ孫)
→代襲相続の場合
※これに対して、遺留分権利者には、兄弟姉妹が含まれない!
たまに、遺言者が遺言で「妻に全財産を相続させる」と書いていたところ、兄弟姉妹が、自分にも、遺留分があるから、相続させろ!なんていう人のことを聞くことがあります。
しかし、兄弟姉妹には、遺留分はありません!
遺言による相続の場合には、遺言で定めていない相続財産の取り扱いが問題となる場合や、遺言で、兄弟姉妹にも、一定の範囲で相続又は遺贈させると記載する場合でない限り、兄弟姉妹は、遺産を取得することはできません。
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■8) |
遺留分って誰がどう請求されるの? |
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遺留分の侵害が有った場合には、@「遺留分権利者」、A「遺留分権利者の相続人」、と遺留分権利者が取り戻すべき財産を譲り受けた者(例えば、例えば父が死亡し、遺言により、母(妻)に不動産全部を相続させた場合に、息子が、自己の遺留分を主張して取り戻すべき財産を友人に売却すると、その友人も遺留分の取り戻しを主張できる。)が遺留分を主張することができる。
方法としては、遺留分を侵害されたとして遺留分減殺請求をする。これは裁判外でもできる。
ただし、この遺留分減殺請求は行使できるときから1年で消滅時効にかかってしまうため、1年を経過して遺留分を主張することは原則としてできなくなる。
遺留分減殺請求をする相手方は、減殺請求の対象は、遺贈及び相続開始1年前までまでの贈与と当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなす贈与減殺請求の相手方は、受贈者、受遺者です。
遺言で遺贈を受けた者が目的物を第三者に譲渡した場合
原則)受贈者に価格の弁償を請求するだけ
例外)譲受人が譲り渡しのときに遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合にはこの譲り受けたものに対して減殺請求できる |
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■9) |
遺留分権利者に遺留分を放棄させられないの? |
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@相続開始前(遺言者死亡前)の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を得たときに限り認められる(民法1043条1項)
許可が認められるためには、放棄が合理的で、妥当かを一切の事情を考慮して、判断される。
この遺留分を放棄しても、相続人の地位は失われない。
遺留分権利の放棄は、他の遺留分権利者の遺留分が増えるのではなく、単に被相続人が自由に処分できる財産の割合が増える
遺言をするときに、事前に遺留分を放棄させ、相続人の1人に遺産を集中させる遺贈なり贈与をする際に、それを実効有らしめるために使う。
相続開始後の遺留分の放棄は、自由と解されています。
既に自分に帰属した権利の処分だから、一般原則どおりに処分できるからです。 |
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■10) |
相続人に相続権を放棄させたいんだけどできるの? |
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相続開始(被相続人の死亡)前に相続人となる者の相続権を放棄させることはできません。これは、相続開始前に、相続人の相続権の放棄をさせようと強制的な行為等がなされる恐れがあるためです。
この点で、遺留分権利者が事前に家庭裁判所の許可を得れば遺留分を放棄することができたことと異なっています。
これに対して、相続開始後は相続権を放棄することはできます。
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■11) |
遺留分の権利と相続権とはどう違うの? |
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兄弟姉妹やその子にも遺留分がない点で、法定相続人の範囲と異なっています。
これは兄弟姉妹やその子は、別個の家庭を築き生活をしているため、被相続人が亡くなったからといって、その遺族としての生活が脅かされるといった状況が考えにくいことがその理由のひとつだと考えられます。
また、相続人が相続権を失う場合、すなわち相続欠格、廃除、相続放棄が有る場合には、そもそも相続自体ができないので、相続できることが前提である遺留分はそもそも問題となりません。したがって、この場合にも、遺留分の主張はできません。
たとえば、相続人である息子が相続人として廃除された場合には、息子は自分に遺留分があるとして、遺産の取得を主張することはできません。 |
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