死亡から相続税の申告納付までの流れ |
相続の流れを知ることが相続争いを防ぐ遺言書を書く第一歩 |
相続は、様々な手続きを踏んでなされます。
その手続きには時間と費用がかかることがしばしばです。
そこで、
遺される遺族が相続によって、無駄な費用や精神的苦痛を受けないようにするためには、事前に準備しておく必要があります。
そのためには、
相続の流れを知り、相続争いや遺された者が困らないような遺言書を作成しましょう。 |
死亡から相続が終了するまでの流れと遺言作成の注意点 |
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死亡診断書の左半分に必要事項を記載し、市区町村役場に提出 |
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死体火(埋)葬許可申請書を一緒に提出し、火(埋)葬許可書を発行してもらう。(葬儀業者に代行してもらうことも可能) |
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預貯金に関しては、名義人本人が死亡したことが分かると、口座が凍結され、現金を引き出すことができなくなります。
こうなると、急を要する葬儀費用を捻出することが困難な状況になったり、故人の給与や預貯金で生活をしていた者にとっては、生活ができなくなってしまいます。
そこで、生前から、死亡した場合には、凍結前に預貯金をすぐに引き出せるように、預貯金の場所、預貯金の有る場所を伝えておくことが必要です。預貯金の解約・引き出しについては、制限があるので、限界があります。
その場合には、金融機関に相談すれば、必要な書類を備えることで、凍結された預貯金も引き出すことが可能となります。
預金を引き出すための必要な書類の中には、法定相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書、法定相続人の同意書などが必要となります。葬儀等の急を要する場合には、一旦口座が閉鎖された後では、間に合わない場合があります。
そこで、前述したように、預金者本人の側で、生前に、死亡した場合にはすぐに預貯金を引き出す様にと伝えると共に、法定相続人の印鑑証明書や戸籍謄本等を、準備しておくか、引き出すためにどのような書類が必要かを、生前から法定相続人に伝えておきましょう。 |
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埋葬方法について、希望がある場合には、遺言書に記すこともできます。たとえば、遺骨を海に巻いてくれとか、葬儀は身内だけで質素にしてくれとか、盛大にとかの希望を書くこともできます。
ただし、その希望には、法的効力はありませんので、遺族がその遺言を無視してもなんら問題はありません。葬儀方法等は、遺族側がするものだからです。
また、遺言書の発見が遅れた場合には、既に葬儀や埋葬が終わってしまったということもしばしばあります。
そこで、遺言書の内容に希望を書くだけではなく、自分が死亡した場合には、遺言書の検認手続等によって遺言内容が速やかに分かるように、遺言書を置いている場所などを、遺族となる者に伝えておきましょう。
また、日ごろから、遺言書に書いたと同様の内容を遺族に事前に伝えておくことも効果的です。
たとえば「死亡したら、葬儀は身内だけで」とか、「葬儀には預貯金の一部を当てるように」とか伝えておきましょう。
遺言の場所や遺言内容を伝える場合には、成るべく、遺言により、多くの利益を受ける相続人に伝えておくことがベターでしょう。
相続人自身に不利益な遺言内容である場合には、遺言書の隠匿、改ざんなどの恐れも高くなるからです。
なお、海や山などへの散骨という方法は、法律上認められていませんが、現実には、多少の散骨は容認されているようです。葬儀社の中には、散骨をオプションとするところもあるようです。 |
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遺言書の有無 |
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遺言書が有る場合 |
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@遺言書が有る場合として、まずポイントは、いかに遺言書を速やかに発見してもらうかという点です。
遺言書の発見が遅れたため、既に遺産分割協議が相続人の間でなされ財産も処分されていた場合など、改めて遺言内容に基づいてやり直さなければならなくなるからです。
これでは、無駄な費用と時間だけがかかってしまいます。
前にも述べましたように、遺言書の所在を明らかにしておきましょう。また、遺言書の紛失の恐れを心配するのであれば、公正証書遺言か秘密証書遺言にしておきましょう。
A次に、遺言書が有った場合には、公正証書遺言を除いて、遺言書の検認手続きが必要となります。
検認手続きは、家庭裁判所で、相続人又はその代理人の全員の立会いの下に遺言書を開封する手続きです。
検認手続きは、時間がかかる場合が多いですから、遺言執行をスムーズに行いたい場合には、公正証書遺言を作成しておくのがベターでしょう。
また、遺言者は、自筆証書遺言や秘密証書遺言にする場合には、検認手続きに手間がかかることを知った上で、そのために必要な書類を事前に準備かぎり用意しておくことをお勧めします。その書類を遺言書に添えて保管しておきましょう。
→検認手続きの書類の詳細はこちら
検認手続きを経ずに開封した場合には、5万円以下の過料に処せられるので要注意です。
このことは、相続人側の人間は案外知らないので、封書の裏に、開封禁止と書いてあっても、とりあえず中身を相続人が確認するのは大丈夫だろうと安易に考えて開けてしまいがちです。
自筆証書遺言や秘密証書遺言を残した場合には、必ず、過料が科せられることを伝え、開封しないように伝えておきましょう。
B遺言書の検認により、遺言が有効であれば次に遺言執行者の選任が必要となります。
この点、一般的には、遺言の執行は相続人自身が行ってもよいので、遺言執行者の選任は不可欠なものではありません。
ただ、法律上、子を認知したり、相続人を廃除したりその取消しをしたりする場合には、遺言執行者を必ず置かなければなりません。
なぜなら、これらの場合には、相続人の相続分に重大な影響を及ぼすため、遺言を執行するものとしてふさわしくないからです。
このように、遺言執行者の選任には、必ずしも必要ではありませんが、遺言書で遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。
遺言執行者を指定していれば、遺言の執行がスムーズにいきます。
その場合には、遺言執行者への報酬をも、明記しておく必要があります。報酬額が明記されていないと、相続人との間でトラブルになる恐れもあり、遺言執行がスムーズになされない恐れもあるからです。
但し、遺言執行者の報酬額については、相続人側の事情も考慮してある程度、相続人側で増減できるようある程度の幅を持たせるのがよいでしょう。
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遺言書がない場合 |
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後になされる遺産分割協議の準備として
○相続人となるものは誰か
○遺産がどれだけあり、どれ位の財産評価となるかなど
を調査することが必要となります。 |
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限定承認、 相続放棄(3ヶ月以内) |
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限定承認 |
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・遺産となる財産には、預貯金などのプラス財産もあれば、借金などのマイナスの遺産もあります。そのすべてを、遺族は相続することとなるのが通常です。
しかし、例えば、100万円の価値がある壷を相続しても、1000万円の借金があれば、900万円の負の遺産を常に相続し、返済をしなければならないかといえばそうではありません。
相続をしたばっかりに、突然巨額の借金を抱えたとなることは、相続人にとり酷です。
そこで、法は、上の事例においては、100万円のプラス財産を相続する限りで、1000万円の借金を返す責任を負担する、すなわち100万円を返す責任を負うにとどまるといった限定承認の制度があります。 |
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・手続きとしては、限定承認をするか、そのままプラス財産もマイナス財産もすべて相続するかを熟慮する期間内に、財産目録を調製して、相続人全員で家庭裁判所に限定承認をすることを申述べることが必要です。
それに加えて借金先の債権者に債権の申し出を催告する手続き等を経て、清算手続が必要となります。 |
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相続放棄 |
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相続放棄とは、相続人となる者が相続するプラス財産、マイナス財産など自ら相続するすべての相続分について、相続することを放棄するものです。
この手続きも、本人が死亡した後、一定の熟慮期間内に、家庭裁判所に相続放棄を申し述べることが必要です。
ただ単に、相続人が「俺の相続分はいらない」と他の相続人に言っているだけでは、相続放棄したことになりません。
また、故人の生前に、相続放棄する旨の約束や念書を書いていても、なんら法律的には効力がありません。したがってこの場合にも相続放棄をしないで、相続することもできます。 |
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遺言書を作成するに当たって |
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相続人が以上のような判断をするには、3ヶ月といった短い期間で、すべてを相続する(単純承認)か限定承認をするか、それとも相続放棄をするかを決定しなければなりません。
相続財産の範囲やその評価、特に債務状態についての詳細、さらには相続人の範囲等をすべて把握して慎重に判断することが望ましいですが、以上のような事情が不明確であると、相続人側が思わぬ立場に立たされてしまう恐れがあります。
たとえば、借金はないと思っていたら、思わぬところから多額の借金をしていたということが熟慮期間後に分かった場合など、もはや限定承認や相続放棄の手段を用いて借金の返済から相続人が逃れることができなくなります。
また、借りてないにもかかわらず、生前貸していたなどと言って相続人がお金を騙しとられることもあります。
そこで、遺言書を作成する場合には、必ずすべての債権債務を財産目録として、添えておきましょう。
また、負債が有る場合には、利率等も含めて明確に書くとともに、借用書等も添付しておきましょう。
貸金業法上の利率と利息制限法上の利率の差異があるため、死亡後に、債務整理等すると、過払い状態となっている場合があり、逆に、お金が返ってくることもあるからです。
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遺産分割協議 |
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遺産分割協議は、相続放棄していない法定相続人となる者の間で、誰がどの遺産を取得するかを協議するものです。
まず、遺産分割協議の方法として、相続人の全員が出席して話し合いでなされる協議分割手続きがなされます。
この協議で話し合いがまとまれば
遺産分割協議の結果について、遺産分割協議書を作成することになります。
これに対して、相続人間の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てます。
それでも、まとまらない場合には、「審判」となります。 |
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遺産分割協議書 |
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遺産分割の協議が相続人間でまとまった場合には、遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割の内容を証拠として残しておくと、相続人間の争いを防くことができます。
【協議書の作成方法】
決められた書式や形式はありません。
署名は手書きで自ら書くこと。
印鑑は実印をしようしてください。
遺産分割内容はできるだけ明確かつ具体的に
相続人分の遺産分割協議書を複写し、各自で保管しておきましょう。 |
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遺言の執行 |
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遺言書が有り、すべての遺産につき遺言書の中で相続等の処分が指定されている場合には、遺産分割協議をする必要は、一般的にはありません。
遺言書に従って、遺言執行人により、執行され、登記等の名義変更がなされます。
これに対して、遺言がない場合などは前述したとおり、遺産分割協議がなされることになります。しかし、相続人間で遺産を分ける場合には、相続財産にからみ、骨肉の争いが長期間行われることに頻繁にあります。
そこで、このような無駄な争いを避けるために、財産目録を作成し、漏れのないように遺言書を作成しておくことが必要です。 |
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相続税の申告、納付、延納、物納(10ヶ月) |
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遺言をする場合には、この相続税に対する対策も必要となる場合があります。
通常、相続税には基礎控除額があるため、多くの場合には相続税がかかりません。
しかし、基礎控除額を超えた場合には、控除額を超えた額により相続税がかかってきます。
そこで、遺言を作成する場合には、相続財産の把握と共に、その財産的価値と相続税が生じるか否かを事前に把握しておきましょう。
できれば、遺言書の中で相続税をどのように支払うか及びその方法も、財産を相続する者のために記載しておくことをお勧めします。
また、相続の対象となる財産を処分することができるのであれば、相続税対策として、財産を処分し財産を整理したり、財産評価を下げるなどの手段をとってください。
建物があれば、賃貸するなどの方法も、相続税対策のひとつとなります。 |
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