パワハラとは
パワハラとは「同一の集団内で、力関係において優位にある者が、自分より劣位にある者に対し
主観的客観的にかかわりなく一方的に、一時的若しくは継続的に身体的・精神的社会的苦痛を与
えることのうち、職場内の権力を背景とするもの」をいいます。
パワハラに対する慰謝料の傾向
慰謝料額の傾向
慰謝料額の幅としては、50万円未満から1000万円以上の幅がある。
最も統計的に多い慰謝料額としては、100万円から200万円の間が最も多く、100万円以下の
ケースが継いで多いが、事案に応じては、損害賠償額として1000万円を超える場合もあります。
パワハラの慰謝料額を算定する要素
慰謝料額に影響を与える要素としては、下記の要素があげられている。
@行為態様の悪質性
Aハラスメント行為の継続性
B被害者の自殺
C被害者の精神疾患の発生
D被害者の素因等
E被害者の対応
F被害が軽微・回復されたか否かなどを考慮している。
パワハラ行為態様の悪質性
行為態様の悪質性が高ければ高いほど、慰謝料額は高額になる傾向にあります。
どの程度が悪質性が高いかというと、たとえば、医学部の教授が助教授に対して、助教授からの
降格を匂わせたり、侮辱的な表現を用いて名誉を棄損したりした事案では、精神的苦痛の他に、
医師又は教育者としての評価を下げる違法性が高い行為であり、悪質性が高く、判例では400万円
の慰謝料を認めている。
医者という社会的地位の高いことを重視し、その社会的評価を失墜させる名誉棄損行為であるこ
とも考慮された。
パワハラ行為の継続性
業務に重大な変更・停止を伴う事案については、判例の傾向からは、50万円程度をベースとすると
考えられます。
そして、いやがらせ行為が長期間にわたって継続する場合には、50万円程度をベースに、嫌がらせ
を受けた年数をかけたものが、慰謝料金額の目安になるものと考えられます。
また、同一態様によるパワハラ行為が長期間継続する事案では、当該行為の態様や被害の程度を
考慮して、1年当たりの慰謝料基準額を算出し、パワハラ行為の継続年数で掛けて算出される金額
を慰謝料額とする算出方法もある。
ただし、行為が継続する場合にあって、10年を過ぎる場合には、10年以上前の行為は消滅時効
にかかっている場合があり、慰謝料金額の算出に考慮されない場合もある。
パワハラ被害者の自殺
パワハラ行為の結果、被害者が自殺したケースにおいて、パワハラ行為と被害者の自殺との間に
因果関係がある場合には、重大な結果であるため、慰謝料額も高額となります。
ただし、因果関係を肯定しながら、過失相殺の規定を類推して慰謝料額を減額する場合もあり
ます。
たとえば、いじめによって自殺したケースであっても、異動などによって、いじめられなくな
った環境の変化があったにもかかわらず、自殺したケースでは、因果関係を肯定するが、自殺に
ついては、被害者側が自殺する必要がなくなっているともいえるため、損害の公平の観点から、
過失相殺の規定を類推し、損害額が減額される。
ただし、パワハラ行為があったが、自殺については予見できない状況であった場合には、因果
関係はないが、実際に死亡という結果が発生しているときは、慰謝料額に死亡という結果が影響
している。
パワハラ被害者の精神疾患
パワハラ行為により被害者の精神疾患が生じた場合には、慰謝料額が増額される傾向にある。
他方、被害者が精神疾患を発症したけれども、被害者の自責の念から引き起こされた仕事上の
ミスが精神疾患の一要素となっている場合など被害者側の事情がある場合には、減額事由とな
っている。
パワハラ被害者の素因等
被害者の素因が原因で、精神疾患が生じる場合には、慰謝料額が減額となる場合が多い。
被害者の資質や心因的要因を考慮し、大幅な減額となる場合もある。
ただ、被害者以外のパワハラ行為へ要因が影響している場合には、減額の割合が減少する。
パワハラ被害者の軽微・回復
被害が軽微・回復は、慰謝料額が減額の要素となります。
就労に支障のない状態に寛解していることは減額要素となります。
パワハラ被害の救済に対する使用者責任
パワハラ被害に対しては、パワハラ行為をした者自体に対する不法行為責任として、慰謝料を
請求することができます。
一方で、会社等の場合には、使用者の責任として、民法715条に基づき使用者責任を負う場合が
あります。
それに加えて、使用者自身の勤務管理義務としての安全配慮義務違反を理由に、使用者自身に
対して固有の責任を認めています(民法415条416条)
→債務不履行責任
加害者と使用者は不真正連帯連帯債務
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