ストーカー行為等の規制等に関する法律が施行された後、平成24年はストーカー被害が急激に
増加し、2万件を近い被害が報告されている(警察庁生活安全局生活安全企画課発表)。
当該ストーカー規制法では、「つきまとい等」の行為が禁止されている。
ここでいう「つきまとい等」の行為は、行為の相手方の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉
を害し、又は、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるものをいいます。
明らかに違法な行為であり、民法上の不法行為を構成します。
また、つきまとい行為ではなくても、ストーカーにより行われた行為が、不法行為を構成する
として、慰謝料請求の根拠となります。 → 判例
ストーカーになる原因は様々です。
@離婚した元夫、妻が離婚後にストーカーになるケース
A婚約解消となった相手がストーカーになるケース
B交際相手と別れた後ストーカーとなるケース
C不倫相手等がストーカーになるケース
D職場などで知り合った同僚等がストーカーとなるケース
F風俗店等で知り合ったホステス等に対してストーカーをするケース
G隣人からのストーカー行為
Hインターネットを通じて知り合った相手がストーカーとなるケース
など様々です。誰かからストーカーをされる危険は誰にもある状況です。
ストーカー被害から救済されるためには、
まず、ストーカー行為を止めさせることが第一に被害者が望まれていることです。
そのうえで、慰謝料を求めたり、刑事罰等を望む方がいますが、ストーカーのトラブル
で一番問題なのは、ストーカー行為が終わったとしても、再発したり、お礼参りのような
加害者側の偏った思い込みや精神状態が異常であることから、生じる二次的被害を防止す
ることです。
最近再びニュースになっているのは、ストーカーから逃げたが、居場所を知られ、殺され
たりする悲惨な事件があります。このような事件は深刻さを増しており、後を絶たないのが
現実です。
そのような現実の中で、法的請求として
ストーカー行為を理由として慰謝料を認めた裁判例は多くあります。
たとえば
【判例:東京地判平16年7月29日】
・ストーカー事案
男が仕事を通じて知り合った女性に対して、一方的に好意を抱き、ストーカー行為等の規制
等に関する法律に違反する態様でつきまとい等の行為を行った。
警察から注意を受けたにも関わらず、頻繁に電話をかけ、駅で待ち伏せ等を繰り返した。
・ストーカー被害への慰謝料認定額 300万円 (請求額1000万円)
・算定要素 @女性には落ち度がない
A男の執拗なつきまとい等の行為の内容、程度、悪質さ等において
違法性が強い。事情を考慮
【判例:東京地判平16年10月22日】
・ストーカー事案
男が宅配便配達を行っていたが、配達先の女性に対して、何度も電話をかけるなどしたこと
により、Xが急性ストレス障害と診断されるような状態に陥った。
・ストーカー被害への慰謝料認定額 100万円 (請求額300万円)
・算定要素 荷物を宅配してもらっただけの男性から繰り返し電話をかけられ、自宅まで
来られたことにより相当の恐怖を感じ、急性ストレス障害が生じたことが算定
要素とされている。
男性の行為は、電話をかけ自宅を訪問したのみで、身体的接触はない
また、侵害態様も強度のものではないことが減額の要素となった。
【判例:東京地判平成19年6月14日】
・ストーカー事案
男が高級クラブのホステスとして勤務していた女性に対して、女性の車内を足で蹴り
ワイパースイッチを損壊し、顔面や腹部を殴ったり蹴ったりする暴行を加え、別れたく
ないと男が述べたのに対し、女性がこれに応じなかったために、女性とその家族を誹謗
中傷し、又は女性を威迫し、侮辱する内容のメールを多数回送信したケース
・ストーカー被害慰謝料認定額 220万円 (請求額700万円)
・算定要素 @暴行の態様及び女性が受けた傷害の程度は軽微でない。
A女性の側に落ち度はない。
B暴行により女性の視力がある程度低下した。
C男による住居侵入は違法性が高い。
Dメールの内容が女性を威迫、侮辱するものである。
Eこのメールを繰り返し受信しており女性に著しく恐怖感、不快感。
Fメールの送信は、誓約書の内容に反するものであった。
他方で
減額要素
@通院期間が短かい。
A通院回数も少なかったこと。
【判例:東京地判平成20年12月25日】
弁護士に対して、元依頼者が恋愛感情を抱き、これを拒絶されたことを理由として
元依頼者と第三者が共謀して、弁護士に対してストーカー行為、業務妨害行為、信用
毀損行為を行った。
・ストーカー被害慰謝料認定額 90万円 (請求額400万円)
・算定要素 @待ち伏せ、監視行為
A懲戒請求とその取下げ撤回の陰湿な態様
B繰り返される懲戒請求における確信的、濫用的な意図
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